住職近況
命のはかなさ、大切さ
読者の皆様、乾燥が続いています。本当に今年は太平洋側の関東以西は、カラカラに乾いているそうです。私の記憶では正月の2日に雪が降り、2月の8日にこれまた雪が降った限りであとは積善寺近辺は降水がない状態です。ただ明日あたりから雨が降るようです。大雨に期待。
さて、私は12月に毎年人間ドックを受けています。その際に我が家は父、母とも胃がんで胃の手術をしているものですから、胃の内視鏡検査を毎年受けてい
ます。10年位前に内視鏡検査をもとに「ピロリ菌」も退治しました。今回はその内視鏡検査の結果がストーリーの始まりです。
内視鏡検査の際に「異常が見られた場合は、検体を採取し細胞検査を行う」とのことで、今回は2か所採取されました。採取は初めてのことではないので「ま
た採取しただけで、陰性だろう。病院外来に行くのが面倒くさいな」程度にしか思っていませんでした。そして数日後、外来にいって検査結果を聞くと「初期の
腫瘍です」と言われました。その瞬間に目の前が真っ暗になり、身体が震えるのが分かりました。年末ということで常勤の医師は不在の為、とりあえず結果だけ
聞くという中途半端な形でした。
「腫瘍」聞いて「手術」「死」「苦しい」「治らない」という事だけで頭の中がいっぱいになり、年末と正月は何を食べても旨くなく、何をしても「心ここに
あらず」でした。本当に苦しい日々でした。年明けに常勤の医師の診察を受けると、「確かに悪性腫瘍だが、初期で小さいので、内視鏡手術で済みそうだ」と言
われました。開腹手術ではないので、少し安堵して、数週間後に検査を受け、腫瘍の大きさや形を確認してもらいました。
手術入院が決定し、いよいよ入院となりました。入院初日に手術を行いました。麻酔で眠っているうちに終わりましたので、手術の実感はありませんでした。
手術後病室に戻り、家族と会ってそのまま寝入りました。翌日医師から、「手術は成功したが、炎症の数値が高いので、穿孔(胃に穴が開く)の可能性があるの
で、断飲食でお願いしますと言われました。それから点滴を続けて、4日で数値が戻り、さらに3日かけて安静を続けて8日断飲食した後に飲食可となりまし
た。大したハプニングでした。
比叡山で千日回峰行の行者様が9日間断飲食をされると言いますが、点滴をしながらも8日間の断飲食はきつかった。最初に飲んだ水が『甘露の露」のように
甘かった。また最初に食べたうすい粥は、ごちそうのように美味でした。飲食が始まってからはほどなく退院となりました。最終日に手術で摘出した組織の検査
結果が出て、「腫瘍は完全に取り切れて、完治した」と言われました。腫瘍の根っ子が残っている場合もあり、その際は胃を摘出する手術になると聞かされてい
たので、ものすごく安心しました。
長々と今回の顛末をお書きしましたが、私はこの「腫瘍」に罹患したことを通じて、「死」や「家族」、「健康」というものの存在、大切さを身に染みて実感
しました。もし今回、発見が遅れたり、手術が上手くいかなかった場合を考えると「命」というものははかなく、そしてとても大切なものだと思いました。幸い
初期に発見してもらうことができ、手術も成功しましたので、今は何事もありませんが、今後再びこのような事があることを想定し、今を、そして未来を、家族
と、関係する人とともに大切に生きていきたいと、心に深く感じました。病気の経験でまた一つ考え方が変わったような気がします。皆様も健康診断はぜひ受け
てください。
沙門 尚田 敬白